ステッカー・シールを印刷方式で選ぶ

ステッカー・シールの印刷方式は沢山ありますが、大きく分けるとインク(版)がどのような状態で印刷対象物に転写されていくかによって分かれるかと思います。版が平らなのか(オフセット)、出っ張っているのか(凸版)、へこんでいるのか(凹版)、穴が開いてインクが通過するのか(孔版)などです。あとはおなじみのインクジェットプリンタやレーザープリンタといったものも印刷方式の一つに数えられています。印刷方式と言っても難しいことはなく、以外と身近なところでこれらのような方式を利用したものがあるかと思います。その多くの印刷方式のなかで、ステッカー印刷・シール印刷に関係のあるものをわかりやすくご紹介させていただきます。
凸版印刷(活版印刷、シール印刷)

凸版印刷の原点は1445年にグーテンベルグという人が活版の印刷技術を発明したことにさかのぼります。原理としては「はんこ」やお正月に年賀状を印刷するための「木版」「イモ版」などを想像するとわかりやすいかと思います。インクが乗る面が出っ張っているので凸版、活版などと呼ばれています。実際のシール印刷では亜鉛や樹脂の板を用いてインクが乗らない部分を薬品によって腐食させて溶かしていきます。こうすることで印刷する箇所が出っ張ってきます。その版にインクを載せて印刷していきます。 下の図に概略をしめしていますがお分かりになりますでしょうか。ローラーとローラーの間をインクがついたり離れたりしています。

シール印刷の版・・・「A」という文字以外の部分は薬品による処理によって溶かしてしまい、「A」の文字を残すようにします。

版を版胴に取り付けてインクローラーにて版胴にインクが乗ります。そして、印刷の対象物にインクが乗ると同時に厚胴によって強く押し付けて圧力をかけて紙にインクを定着させて印刷します。(はんこを押すときに強く押し付けるのと同じです。)

多色の場合は色数分の版を作ってそれぞれ別のインクを持って印刷します。別の色はとなり合うことはあっても交じり合うことはありません。そのため、写真やグラデーションといった連続階調は表現できません。

インクは割りと薄く盛られて、なおかつ、インク自体に耐候性が無く、紫外線に弱く退色が早く起こりますので屋外用途には不向きとなります。従いまして、主に商品ラベルやシールとして屋内で利用されています。 このシールを屋外用のステッカーとして販売しているところがあるとお客様からお聞きしたことがありますが、例えばこのシールを車に貼った場合早いと数週間で色が褪せてしまいますのでご注意いただいた方がよろしいかと思います。

シール印刷機は印刷~型抜き~型抜き後の残ったカス取り~ラミネート加工まで一気にやってしまいます。裏面に糊が付いた印刷用紙(タック紙)を印刷機にセットすれば、機械がタック紙を巻き取り印刷してくれます。その後は透明の表面保護フィルム(PP:ポリプロピレン)加工、や四角形や円形などお客様のご希望の型にシールを抜く型抜きしたり、型抜き後不要になった紙を取りぞのくカス取りまでこなしてしまい、あっという間にシールが出来上がっていきます。このようにほとんどの作業は機械がやってくれるため大量ロットになればなるほど単価が下がってきます。シール印刷は他の印刷方式と比べて単価が安く済むのが一つの特徴となっています。

オフセット印刷(フルカラー対応)

オフセット印刷は平版印刷とも呼ばれていて、水と油の性質を活かして平らな刷版にインクが盛られ対象物に印刷されます。オフセットとは平らな刷版(PS板)に乗ったインクをブランケットというローラーに移して(OFFして)、さらに、ブランケットから印刷対象物へインクを移す(SETする)という意味になります。

版を横から見ると水とインクは立体的に見えますが、厚さは数ミクロンほどですのでほとんど平らにしか見えません。(そのため平版印刷とも呼ばれています。)親水層と呼ばれる部分には水しか乗らず、親油層と呼ばれる部分にはインクしか乗ることが出来ないのでこれらが混じることはありません。これは水と油が反発しあう性質を利用しているからです。

版胴に固定した刷版(PS板)にインクと水を浸します。版胴が回転するとブランケットにインクが転写されます。ブランケットから印刷物にインクが転写され印刷が完了します。

オフセット印刷はクオリティの高い印刷に向いており、商業印刷全般(ポスター、パンフレット、カタログ、チラシ等)で主流となっています。新聞折込やポスティングで入ってくるチラシ、メーカーから配布されるカタログなどほとんどの印刷物はこのオフセット印刷によって作成されています。オフセット印刷の色は主にC(シアン)、M(マゼンダ)、Y(イエロー)、K(ブラック)の4つの組み合わせでフルカラーを表現しています。今ではインクジェットプリンターが普及しているのでおわかりかと思います。

印刷物をルーペなどで見てみるとCMYKの細かい点で構成されているのが分かるかと思いますが、この点(網点)の面積の大きさが色の濃淡を表しています。例えばK(ブラック)で見てみますと、網点が大きくなるほど黒の色に近づいていき、小さくなるにつれてグレーになり、さらに小さくするとベースの色が白の場合は白に近づいていきます。ちなみに、写真などの1枚のものからCMYKの4つの版に分けることを「カラー分解」といいます。

弊社では現在オフセット印刷のシールには対応しておりません。ご了承ください。

シルク印刷、シルクスクリーン印刷(孔版印刷)

シルク印刷とはスクリーン印刷とも呼ばれていて、紙や塩化ビニール(塩ビ)のシート以外の素材(布、金属、ガラス、プラスチック)など幅広い印刷に適しています。シルク(絹)の網の目(スクリーン:紗)を用いて印刷に不要な部分を乳剤で隠して、それを印刷の対象物の上に置き、スクリーン版の上にインクを盛ってヘラのようなもの(スキージ)を使ってインクを擦りつけて、スクリーンの下の印刷対象物へインクを押し出してプリントします。昔でいうところの「ガリ板印刷」やお正月に年賀状をプリントするために使う「プリ○トごっこ」などを想像すると分かりやすいかと思います。

スクリーン版の種類にはシルク(絹)、ナイロン、テトロン、ステンレスなどがありますが、現在ではシルクを使うことはほとんどなく、ナイロンやテトロンが主流となり単に「スクリーン印刷」と呼ばれることが多いようでうす。弊社では便宜上、「シルク印刷」というキーワードを使用させていただいております。 ナイロンやテトロンでもシルク印刷では同じ効果が得られます。こちらの方がコストが安く済むためシルクは使われなくなってきました。

スクリーン版の枠・・・「A」という文字以外の部分にはインクが下に流れないように乳剤を使って、レジスト(版の膜)を作っていく

スクリーンの縦と横にシルクの細い線を張り巡らせて(メッシュ)います。このメッシュが細かい文字やデザインの印刷を可能にしています。

版の上にインクを盛ってスキージでインクをスクリーン版の上に押しあてて下の印刷対象物の上に落として印刷していきます。インクをメッシュの中へ通過させるにはスキージを持つ力も結構必要になります。この印刷方式は孔(あな)のあいた版を使ってインクを通し印刷するので孔版印刷とも言われています。

多色の場合は色数分の版を作ってそれぞれ別のインクを盛って印刷します。別の色がとなり合うことはあっても混じり合うことはありません。従いまして写真やグラデーションといった連続階調は表現できません。

インクが厚めに盛られるので耐候性(雨・風・紫外線など)が非常に高しです。印刷というと通常は平面の物への印刷になりますが、このシルク印刷は曲面へも印刷可能です。スクリーン印刷は牛乳のビンやシャンプー・リンスのパッケージ容器、化粧品のビンなどの印刷にも利用されています。単にステッカーやポスターだけでなく、屋外看板、POP、ディスプレイ、のぼり、標識などの商業分野での利用。また、Tシャツ、文房具、玩具、カバン、化粧品の容器、ガラスのビンなどの生活分野での利用。プリント配線版(プリント基板)、計器の目盛り関係、ネームプレート、銘板、液晶ディスプレイ、携帯電話など様々な製品に用いられています。 表現の細かさはこのスクリーンの網目の細かさに比例しますので小さい瓶や携帯電話などを印刷するために使用するスクリーンの網目は非常に細かくできています。

インクジェット印刷(溶剤系)

インクジェットは特にご説明の必要もないかと思いますが、CMYKの4色を基本として、6色、8色などのインクのカートリッジからインクを流しヘッドからジェットでインクを吐き出して紙などに印刷する方式です。一昔前のインクジェットプリンタは解像度もをれほど高くなく印刷したときにドットがかなり目立っており、特にデザイナーさんからはあまり好かれてなかったようです。現在では解像度もかなり高く、インクの色数も増えてキレイに表現できるようになりました。ご家庭にあるプリンターは染料インクまたは顔料インクかと思いますが、屋外用途であるステッカーの印刷には溶剤系という耐候性の高いインクを使います。これは看板やバスのラッピングなどに使われているものですので、耐候性の高さはお分かりいただけるかと思います。溶剤系においても解像度、色の表現の度合いが上がっていますのでクオリティの高いフルカラーステッカーが製作できるかと思います。ステッカーの作成に溶剤系インクジェットのプリンターはなくてはならない存在です。